例えば、二人の人間がいたとしよう。
その二人は王と奴隷であった。それが意味するは唯一つ。
同じ運命の奴隷である二人は、立場の違いによって虐げるものと虐げられるものとなったということ。
しかし、運命の糸の支配下では、然したる意味を持たないが。
……何故、こんな話を始めたのかって? いい質問だね。
実は、こんなくだらない話をしたのには訳がある。
私はある日、とある友人に頼み事をされたのだ。
その頼み事とは、ゴミ箱の中を綺麗にしてほしい、とのこと。
いたって簡単そうな頼み事だろう? ……一見は、だが。
実は、これが本当に面倒くさい頼み事なのだ。
何せ、ゴミ箱と言っても『彼女』の言うゴミ箱は世界という檻のことなのだ。
全く、幾ら私に時間が無限にあるからってこれはないだろう?
と、話を戻そう。
つまり、『彼女』にとって世界とはゴミ箱であり、其処に生きるものは全てゴミに等しいのだそうだ。
詰まる所、『彼女』にとって、王も奴隷も詩人も勇者もゴミなのだよ。
『彼女』も随分と酷なことをするものだと思わないか、諸君?
……退屈しのぎになるなら、それも構わないがね。
しかし、その頼み事もすぐに片づけられそうだ。
どうやら、『彼女』の意思を漠然とだが知り得た人物がいるらしい。
だがそう簡単に退屈しのぎを潰されてしまっては、今度は私が生き飽きてしまうという問題が発生するのだよ。
そこで、私は考えた。どうせ、世界へ介入するために『人間』に姿を変えられるというなら、その特典を大いに活用して退屈しのぎの遊戯をしようと。
どうだい? 実に名案だと思わないか? まあ、君たちには理解できないだろうがね。
さて、そろそろ『彼女』がお待ちかねだ。駒を揃えて、ゲームを始めようか。
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