世界の万事を育みし樹。
 その樹は、俗に『世界樹』と呼ばれ、その根は『光の脈』となって世に渡る。
 世界の中心となるその樹を支えるのは、『母なる運命の三姉妹』。彼女たちは、世界樹を守る為にその樹を囲う『神殿』を築き上げた。
 そして、その神殿を囲うように『五つの柱』が地を築き、その地から彼らは『我が身の分身たるもの』を造り上げた。

樹を守る五つの大地
太陽神の築いた地――エルド
牧神が築いた地――ヴィズ
地母神が築いた地――イェルズ
風神が築いた地――ヴィンド
水神が築いた地――マール

樹を護る五柱の化身
激情を駆る紅玉
幸福を訴う翠緑玉
恩恵を授ける黄玉
祈祷を諭す金剛石
忘却を誘う青玉

そして
光と闇――即ち
生と死を司る
明けの明星の水晶      罪を清めし紫水晶

 やがて『楽園』は『戦場』へと変わり、神々は滅亡し、歴史は神話となり語り継がれる。
 人々は、我こそが真の眷属であると語りはじめ、『一つの聖地』が生まれた。
 世界樹の盾は地を裂く矛となり、一つの系譜を生む。
 『ただ一人の男の理想』は継受され、時を越え、空を越え、幾多の世を渡りながら、一人の少年の歯車に行きつくだろう。
 死に触れて育った少年は、やがて『生を謳う楽師』となり、一つの呪縛を解き放つ。
 そして、少年は青年となり、時を渡って二人の迷い子と出会い、叙事詩を遡っていく。
 衝動が昇華され、偶像が実像を見出したとき、時間と空間、世界をも越え、奇跡の邂逅が為されるだろう。

 そして、世界をも越えた少年は、再び扉を開いて旅に出る。
 置き去りにされた歴史を探し求め、零れ落ちた砂をかき集め、もう一度出会える奇跡を求めて。


 ここから始まるのは、自らの『理想を追い求める者』たちの長きにわたる円環の記憶の御伽噺である。


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